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嘘も方便?

A君B君は、ながーいお付き合いのおさな友達です。

A君は、正直ものでした。

B君は、嘘つきでした。

A君は、頭はいいのですが、B君の前では、持前の正直さが災いしてしまいます。

B君の「あの子は悪女だ」という言葉を信じて諦めた彼女と、B君が結婚しました。

A君が「車を売りたい」と言った時も、B君が親切を装って「くるま屋に見せたら事故してるから売れないだろうって…」と言った言葉を信じて、B君にただ同然で売りました。

真っ赤なポルシェでした…。

このように、B君は、A君の正直さをことごとく利用して裕福になっていきました。

勿論、頭のいいA君も、それ相応に成功しました。

A君は、B君の嘘をわかっていたのですが、何も言いませんでした。

何故かと聞かれても、性格として言いようがありません。

そんな人生も終わりに近いある日、A君に疑問を持ったB君が聞きました。

「どうして人を疑わないんだ?どうして嘘だとわかっても怒らないんだ?頭はいいのに、どうして損までして、正直に生きようとするんだ?」
B君の質問に、A君は人のいい顔をにこにこさせながら黙っていました。

「お前って奴は、なんて優しいんだ…。今まで騙し続けてきて悪かった!このままじゃあ俺も死ぬに死にきれん。なあ、A頼む!嘘をついてくれ!俺の為に、嘘をついてくれ!」


自分を恥じたB君は、憤慨するように頼みこんだ。

するとしばらくの沈黙の後、A君は、今までに見せたことの無いような意味ありげな目でB君を見つめた。

そして、その口をゆっくりと開いた。

「B君、そんなに悩むなよ。僕は君が思っているほど潔癖な人間じゃないよ。それどころか…」


「どういうことだ!?」


びっくりしたB君は、A君が喋り終わるのを待ちきれずに聞き返した。

「僕の方こそ本当の嘘つきなんだ…。実は君の女房…、君と付き合いたいって僕に相談してきたんで、君の性格を利用して一芝居うったんだ…。あの車だって…、もともとただ同然で手に入れた本当の事故車で…、それを僕がまわりと組んで、君が得したと思うようにしたんだ…。何より悪いと思うのは、君の女房が…、うまくいったお礼にって…、本当…、悪気は無かったんだ。こんな取り返しのつかないことになるなんて…、実は君の息子…。やっぱり言えない!本当、ずーっと君の女房と悩み続けてきたんだ…。すまん!許してくれ!」


A君は、そう言って頭をペコンと下げた。

「そう言えば…、あいつと一緒になった時おまえ…、信じられない程冷静になって、祝ってくれた…。車も、妙なくせがあると思った…。家の息子も…、お前に似てるところがある!」


考えれば、考えるほど、思い当たるふしがあるB君は、ショックで呆然とした。

「嘘だろう?」
B君がきいた。

「嘘だよ。」
A君が言った。

「嘘だ!俺がこんなにショックを受けたもんだから、そう言うんだろ!?お前ほどの知能犯ならやりかねん。へっ、油断した俺が馬鹿だったぜ!さぞいい気味だと思っているんだろ!?お前は最低の野郎だ!俺をだますなんて…」


B君は取り乱し始めた。

「違うよ。君が嘘をつけと言ったから、正直に嘘をついただけだよ。」
A君が言った。

「ほう…、うまいこと言うじゃねぇか。本当、小賢しい野郎だ!もうだまされんぞ!」
B君は言った。

「本当に違うよ。嘘だって言ってるじゃないか。」


A君は必死に説得したが、B君は頑なになって聞き入れなかった。そしてこの日はとうとう物別れに終わった。B君は家に帰ってからも女房、子供、車、全てを疑った。

そしてそれ以来、自らの嘘をつくという生き方の為に、自ら苦しみ、孤独にその一生を終えました。

そうです。

B君は、「嘘」という永遠に癒されない魂のトライライトゾーンに迷いこんだのです。


ピンポーン♪

 

世の中に必要な「嘘」があるなんて、嘘だ。

「嘘」とは、真実の上に成り立つからだ。

真実が無くなったら、全部「嘘」になってしまうからだ。

ここに書かれていることも「嘘」に見えてくるだろう?


そうなったら終わりだ。何もかも無意味。

「嘘」を「知恵」だと思っている奴は、「馬鹿」だ。


なぜなら、それは、「正直者」という「弱者」を騙すだけだからだ。

そしてそれは、何時かそいつ自身の「真実の畑」を脅かすからだ。

 

 

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