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Letter From GOD (神からの手紙) letter from god
 これは、いつどこで起きたのか、起きるのか分からない、限りなく嘘のような、本当っぽい話です。

そしてそれは、ある村の古い言い伝えから始まります。

 

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神はわが子をこの地に遣わした。

わが子は、なぜこの世に遣わされたのかを知るまで歩まねばならない。

星の数ほどの意味と、宇宙の果てほど遠い答を求めて、歩まねばならない。

わが子はそれを知る時に全てをも知るであろう。

我は、わが子をこの地に遣わした時と同じ時、全ての問いに答える手紙を送る。

その時まで、わが子は答を探し求めねばならない。

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村人たちは、この言い伝えに従い、先祖代々この答を探し求めてきました。

しかし、一つ不思議な事がありました。

それは、この言い伝えがこの村独自のものであり、近隣の村には、似たものすらないことです。

その為、この村の歴史は、苦難の歴史でもありました。

なぜなら、その言い伝えは、村人たちの特別な運命を自覚させるとともに、他の村から異質なものとして孤立させたからです。

しかし、どちらかというと、かたくなになって交流を拒んだのはこの村人たちで、周りの村は諦めて、やむを得ずその存在を気にしないようになりました。

しかし、実はそれを望んでいたこの村の人たちは、その孤独な平和を手に入れて喜びました。

というのも、やっと邪魔されずに、大きな目的に向かって準備を始めることが出来るからです。

その目的というのは、神からの手紙を受け取る準備です。

『我は、わが子をこの地に遣わした時と同じ時、全ての問いに答える手紙を送る』 この『同じ時』というのが、同じ星の配列が起こるときであることがわかったのです。

それは、計算上二度と起こらないもので、間近に迫っていました。

その為、村の人たちは、この聖なる時に備え、一層敬虔になって準備に励みました。

 ここで、健太という青年の話をしなければなりません。

健太はこの村の問題児で、どうしようもないきかん坊でした。

村の教えになじまず、反抗ばかりするので、みんなからも見放され、嫌われるようになりました。

そんな事ですから、手に負えなくなった両親が、村の村長に相談を持ちかけたのも当然のことでした。

というのも、村長は、村の実権を握ると共に、教育問題、神仏問題の全てを預かっていたからです。

村長は、健太を自分の経営する学校に入れ、自分の息子を良き友として紹介しました。

しかしやはり健太は、そこでも数々の問題を起こし、うまく馴染みませんでした。

健太の孤立は、あたかも、この村の孤立を象徴しているようでしたが、だれも、それに気付く者はいませんでした。

村長は、失敗に対する苛立ちと、自分のやり方を正当化させる事で、意地になり始めました。

その為、だんだんと人の嫌いなものを無理やり口に入れるような強引なやり方になっていきました。

しかしそれは、事態を悪化させるばかりで、うまくいきませんでした。

そうしているうちに、村長の目的は、いつしか健太を育てることから、自分のやり方を正当化する問題にすり替わっていました。

村長の失敗に対するプライドは、健太に対する憎しみに変わり、そしていつしか、村全体の憎しみにまで増幅されました。

 しかし、健太は、本当にそんな大それた存在なのでしょうか? 健太はただ、野に咲く一輪の花のように、自分の運命の花を咲かせようとしていただけなのです。

なのに、みんなはその一輪の花が咲くことを許せず、その一輪の花が咲くということをまるで、全ての花を枯らす雑草のごとく大きな存在に、自ら捏造し、自ら拡張し、自らを苦しめているだけなのです。

健太は誰も枯らさない。

それが本当なのです。

そんな訳で、健太は、孤独に淡々と生きるようになりました。

そして人々はなぜか、その平然と生きている姿が許せませんでした。

しかし、本当はもう、健太がどう生きている姿が許せませんでした。

それは、いつしか、自分達の心のなかに、「許したくない」という潜在意識を持たされてしまったからです。

しかし健太は、決して淡々と生きていた訳ではなく、自分の立場を良く知っていたのです。

同情も理解もする気のない者に、和解を求めようが無いことを…。

それに、何より、そういった友達に理解を求める行為が、友達を賛同者として苦しめることを知っていたのです。

「もう友達を持たない」 それが健太の友情でした。

 健太は、村の外れに一人で住むようになりましたが、村人の健太に対する態度は、ひどくなっていくように思われました。

それは、喜ばしい聖なる日が近付いているのにもかかわらず、健太という問題に悩まされているからです。

健太の両親も、その村の掟みたいな感情に勝てず、毎週、食物と衣類を届けるぐらいが親として出来るやっとのことでした。

しかし健太は、その立場を理解していたので、恨む事はしませんでした。

健太は、いつかみんなに分かってもらえる日を期待すると共に、聖なる日に全てから解放されることを期待していたのです。

健太は信じていたのです。

聖なる日が、この問題をも必ず解決する筈だということを…。

村人たちは、何もしないでそれを望む健太に怒りを感じていましたが、本当は、健太も何かしたくても出来なかったのです。

自業自得とも言えるかもしれませんが、その是非については、前述の問題に回帰するので、ここでは言及しません。

 しかし、どんな問題があるにしろ、時間は待ってくれません。

聖なる日がついにやってきました。

 村は朝から大変なお祭り騒ぎです。

聖なる日の聖なる同じ時の象徴的な目印は、彗星と、月が、真上で重なる時なのです。

手紙を受ける儀式を行う広場の準備も、間もなく完成です。

しかし、準備に追われる忙しさのあまり、村長の行動に気付く者はいませんでした。

村長は、聖なる儀式に健太を参加させないよう、部下たちに命令したのです。

健太はそんな事も知らずに、心を弾ませながら儀式に参加する準備をしていました。

やがて、数人の覆面をした男達が、突然部屋に押し入りました。

「だれだ!?うわっ!何をするんだ!」 「お前のような奴を神聖な場所でうろうろさせる訳にはいかないんだよ!」 村長の差し向けた暴漢たちは、健太を縛りあげて、納屋の中に閉じ込めてしまいました。

同じ頃、村ではシャーマン達が、聖なる時の為の祈りを始めていました。

夜空を見上げると、問題の彗星が天空に姿を現しました。

彗星は、ぐんぐん近づいてきて、満月の月にその姿を重ね始めました。

そして不思議なことに、それまでの勢いが嘘のように、スピードを落とし始めました。

月と彗星はまったく同じ大きさで、だんだんとその姿を重ねていきました。

ついに、月と彗星が重なりました。

ピカッ!! その瞬間、太陽の数倍も明るい閃光が走り、みんなは思わず、体を伏せました。

「手紙は、確かに渡した」

その時、地を震わすような雄々しい声がして、光が消えました。

村人たちは、突然の光の残像と沈黙の中に放り出され、言葉を失いました。

そして、何千年も待ち続けたことが、あまりにもあっけなく終わったので、まだ何かあるのではないかと、しばらく黙って待っていました。

しかし、無情にも彗星は月の横から姿を現し、スピードを上げて飛び去って行きました。

それを見た村人たちは、何が起こったのか分からず、騒ぎ始めました。

やがて、村長が祭壇に姿を現すと、みんなが注目しました。

「皆の衆、実は私もまだ何が起こったのか把握出来ていない。

しかし、手紙が何らかの形で手渡されたのは確かなようだ。

そこで、それを究明したいと思う。

皆の中に、この一瞬の出来事の中に、何かを感じが者はないか?どんな些細なことでもいいから、心当たりのある者は今すぐ申し出てもらいたい。

村人たちはみんな心当たりを探しましたが、「ハンドパワーがついた」とか、「未来が見えるようになった」とか言い出す者が何人か申し出ただけで、どれもいい加減なものばかりでした。

なおも慎重に、一人一人に当たってみましたが、何も見つかりませんでした。

みんなが悩みつくして疲れた頃、一人の若者がひらめいた様に言った。

「もしかして、健太…

そうです!みんな健太のことを忘れていたのです。

「そうだ、健太だ!健太に違いない!!」

それを聞いて焦った村長は、みんなを扇動し始めました。

冷静さをすっかり失った村人たちは、村長を先頭に健太の家へ向かって行きました。

「健太!出て来い!!」

健太の家を取り囲んだ村人たちが、口々に叫び始めました。

しかし、何の返事もありませんでした。

怒りの頂点に達した村長は、家のドアを蹴破り、部下を中へ押し入らせました。

「こっちにはいないぞ!納屋だ!納屋を調べろ!!」

部下たちが中から叫びました。

急いで納屋の方に行くと、神からの手紙が入っていたらしき箱が神々しく光りながら転がっていました。

そして、縄から無事抜けたらしく、健太の姿はどこにもありませんでした。

「奴め、手紙を持ってどこかに逃げやがった…

村長が、腹の底から無念そうに言いました。

「あいつ、独り占めする気だ!」

「畜生、よりによって、なんであんな奴に!手紙さえ取り返したら、ぶっ殺してやる!」

健太に手紙が渡されたことに対する怒りは、たちまち憎しみに変わり、そしてついに破壊となってあらわれ、家に火が付けられました。

「探せ!探し出してぶっ殺せ!」

まったく、どんなに精神的に磨かれた人も、理性を失うと獣同然になってしまうのは、所詮人間が、その本性を覆い隠しているにすぎないからであろうか? 正義なき大衆は暴徒である。

しかし、作られた正義は、暴徒を正当化するのだ。

そして、その「正義」は、悪を捏造することによって作られるのだ。

だれも健太に対する自分達の行動を疑っていませんでした。

彼等は完全に、暴徒と化していました。

 一方、健太の方はどうしていたのでしょうか? 実は、健太は、事の一部始終を丘の上から見ていたのです。

何と健太は、村人たちに喜んでもらおうと、神からの手紙を山の近道を通って持っていく途中だったのです。

健太は、腰が向けたように地面に座り込み、泣いていました。

しかし、泣くことが「単に人に見せる弱みにすぎない」とやめていた健太が泣いたのは、神が自分を見ていることを知った甘えからなのか、それとも、新たに悲しみの限界を超えるものに出会ったからなのか、それは分からない…。

 夜が明けると、健太を探し出すために、村人たちが広場に集まっていました。

昨日の暴挙に対して反省している者もいましたが、たいていの者は「自分たちは正しいんだ」という身内価値観の中に、知らない顔をして隠れていました。

しかし、村長は、もう怒りと憎しみで腹の虫がおさまらず、イライラしていました。

それは、もちろん健太に対してでしたが、潜在的には、健太に手紙を渡した紙に対するものでもありました。

村長が、山狩りをする作戦を村人たちに指示し始めた時、後ろの方がざわめきだしました。

なんと、健太が自分から姿を現したのです。

「確かに僕は、神からの手紙を持っている。

でも、今ここにはない。

村長が僕の身の安全を保障してくれるなら渡す。

夕方、また来るから、その時に返事をしてくれ。

本当はこんなことしたくなかったんだ…

健太は、それだけ言うと、再び山の中へ消えていきました。

村人たちは、それを追おうとしましたが、村長がそれを止めました。

そして、目を光らせると、みんなを集めて会議を始めました。

夕方、健太が約束通り姿を表すと、歓迎の花火が上がって、「健太歓迎祝賀会」という垂れ幕が出されました。

健太を受け入れることにした村人たちは、手紙の話題に触れる事無く、今までの非礼を詫びながら、歓迎会の会場まで案内をしました。

健太は用心して、手紙を持っていきませんでしたが、村人たちの素直な気持ちと優しさに触れ、それを疑った自分を恥じました。

そこで、そっと宴会を抜け出して、手紙を取って来ることにしました。

健太は、お手洗いに行くふりをして、裏口からそーっと抜け出しました。

「これで終わりなんだ!これでみんなと仲良く出来るんだ…

健太は、心の中で呟きながら、秘密の場所へ向かった。

健太は、枯れた木の幹の中に隠した手紙を取り出すと、手紙と希望を抱きながら急いで戻りました。

「手紙になんて書いてあるんだろうなあ…。みんなと読もうと思ってたから楽しみだなあ…」

健太は、気付かれないように、裏口からそおっと入ろうとしましたが、調理場から聞き覚えのある声がしたので、立ち止まりました。

村長とあの暴漢たちでした。

「村長さん。いつまで健太にあんないい思いをさせておくんですか?」

「まあ、慌てるな。奴から手紙を奪うまでの辛抱だ。

健太はこれを聞いたことを後悔しました。

なぜなら、たとえ嘘であろうと、人生の中で一番幸せだったひと時が、その瞬間に終わってしまったからです。

健太は、一刻も早くその場から逃げようとしました。

しかし、ショックでうまく体が動かず、バケツに足を引っかけてしまいました。

ガチャーン!! 「誰だ!?」 物音に気づいた村長は、慌てて外に飛び出しました。

そして、走り去る健太を見つけると、大声で皆を呼びました。

「みんな、出て来い!健太が逃げたぞ!早く追いかけるんだ!!」

村長の掛け声に、村人たちは次々と宴会場から出てきました。

健太は、ショックと大勢の人に追われる恐怖で、足がもつれて思うように走れませんでした。

しかし、まるで獣を追う狩人のような村人たちの気迫に、その足を休めることが出来ませんでした。

「待てー!待ちやがれ―!!」

村人たちは、口々に叫びながら、どんどん迫ってきました。

健太は死に物狂いで走りました。

しかし、自分の足を動かすのが精一杯で、向かっている方向を考える余裕の無かった健太は、皮肉にも自分を崖っぷちに追い詰める羽目になってしまいました。

もう逃げ道はありませんでした。

「さあ、健太!観念してその手紙を我々に渡すのだ!」

村長がすごい形相で迫ってきました。

「いやだ!僕を騙したじゃないか!!」

「馬鹿め!もうそんな事を言える立場じゃないぞ

「いやだ!近づいたら飛び降りるぞ!!」

しかし、村長はそんなことお構いなしといった様子で、その距離を縮めていきました。

「やめろ!来るな!!うわーっ!!!」

健太は、村長から逃げようとしてついに崖から足を踏み外してしまいました。

村長は、急いで崖を駆け降り、息絶え絶えの健太をよそに手紙を探しました。

後から来た村人たちは、さすがに健太の看病に走りましたが、もう手遅れでした。

村人たちは涙を流しました。

しかしそれは偽りの涙、悲しみを健太に捧げていたのです。

というのも、その涙は、健太の為に泣いているという自分の為の涙であったし、その悲しみは、健太は死んだ方がうまくいくのだという自分の本音を覆い隠すためだったからです。

心から悲しんでいる者もいましたが、もはや命のない健太にとってそんなものは本質的に同じものでした。

そこに形式的で愛のない小さな墓が建てられました。

名前ももちろんありません。

 さあ、いつまでも悲しみに浸っている場合ではありませんでした。

そうです。

神からの手紙が、今現実のものとして手に入ったのです。

みんなは急いで村に戻り、広場に集まりました。

やっと、各々の悩みから解放される時が来たのです。

さっきの事などすっかり忘れている村長は、本来望んでいた儀式の形に戻れて、満足そうでした。

自慢の服を整えながら祭壇に立ち、意味もなく咳払いをして、みんなに見えるように大きく手紙を振りかざしました。

ワー!!みんなの拍手が沸き起こりました。

いよいよ開封です。

村人たちは、一斉に歓声を沈め、声を押し殺しました。

村長がゆっくり封を切ると、神の手紙らしく、美しい光が天に向かって漏れました。

その高貴で不思議な光は、村人たちの希望の鐘を打ち鳴らしました。

そしてそれは、村人たちの中の希望を最高点まで沸騰させました。

村長は、生唾を飲み込んでから、光輝く手紙を丁寧に取り出しました。

ついに読み上げる時が来たのです。

村人たちは村長に注視しました。

しかし、村長は、緊張しているせいかなかなか読み上げません。

そしてその必要以上とも思える「間」は、みんなをますます期待させていきました。

「村長は、神の字が読めないのかな?」

「いや、神様の字が汚ねえのかも知れねど…」

何人かの村人が小声で言った。

しかし、よっぽど興奮しているのか、村長の体がガタガタと震え始めました。

みんながその態度を不思議に思ってみていると、次に顔の色がサーッと引いて、真っ青になりました。

そしてついに、ノックアウトされたボクサーのようにその場に倒れてしまいました。

村長の手から離れた手紙は、粉砂糖のような細かい光をこぼしながら生きているように宙を舞い、村人たちの前に落ちました。

それを見た村人たちは次々と叫び始めました。

「なんていうことだ!!!!」

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この物を受け入れよ

この者が手紙であり、命あるかぎり全ての問いに答える

GOD

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